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楽しい絵巻たち [読むものと見るもの]

日本橋で開催していた「日本の素朴絵」展。
9月初めまでだったので、なんとか滑り込みで見ました。
概要しか知らなかったので、目当ては「絵因果経」と「長谷寺縁起絵巻」。
此の二つは出ると聞いていたので。

行ってみると、一室目から、ひきつけられるものでした。
最初は絵ではなく先頭は埴輪。鏡像、土器や仏像など。
入ってすぐの「誕生釈迦仏立像」、鏡像、御正像の三女神像にひきつけられる。
そしてなかでも、平安時代の阿弥陀如来坐像の小さいかわいらしい姿がとても
美しかった。素朴、といわれる表情ではあるが、洗練された心、瞑想姿を
感じさせる。美しい静かな柔らかな、親しみやすいが上品な表情。
素朴とは何だろう。と思う。
素朴とは洗練されていない、あるいは技巧を凝らしていない・・・といった
ことではあるのだけれど、しかし、素朴さの中に洗練や素朴の中に現代人が
どうしても出すことができない技があるのだ。この「素朴」のテーマのもとに、
像や絵巻、掛け軸、本が集まっていて、意外な幅広さを見せている。
なにより、思っていたより「知っている好きなものが集まっている!」という
嬉しい展覧会でした。

ぱっと見ると「かわいい」と表現される狛犬、獅子、神馬と口取りの像も
でも、技術的に未熟か、といわれればそうともいえない。かわいいだけかといえば
やはり「大人の表情」なのだ。かわいくほっこりか、といえば、洗練されてもいるのだ。
いやしかし、では「洗練された繊細なものか」といわれれば、どうだろう。繊細さが
あるのだが、近代的な繊細さ近代的な洗練とは違うものなのだ。
神馬口取り人形は人形のプロポーションに素朴さがあるのかもしれない。
しかし馬のほうは立派な姿。どうも、対象への詳しさ、関心の持ちようによっても
つくりがちがうのかもしれない。私はこういうった昔の人の「人間の体のとらえ方」が
好きだけれども。


そして、それぞれの表現は割合自由さをもっているような気がする。
目的やある程度の約束はあるものの・・・次に続く「地蔵十王六道図」なんかは
「自由だなあ」という掛け軸。地蔵菩薩が六道をめぐる絵ではあるのだけれど、
なんだかのどかでどこか明るい。ちょっと楽しげでもあるという不思議さ。

出ていると知れば見る「絵因果経」。断簡でした。
三迦葉が出てくる部分だとか。

そして続く絵巻、奈良絵本!一番好きなジャンルがこんなかと嬉しかったです。
なかでも、あまり見ることが無い「おようのあま絵巻」
一部だけでしたが「おようの尼」が頭に物をのせて
御用聞きのようにやってきているシーンの公開でした。此の後これが・・・。
と内容はちょっと狂言みたいな感じの話です。一応ハッピーエンド?(女性側が)

私が行ったときは
長谷寺縁起絵巻(前半は厳島神社縁起絵巻だったそうです。残念・・。)、
しかし一番好きなあの霊木がどーんと流れてくるシーンじゃありませんでした。
比較的おとなしい長谷寺の中を案内するような内容のシーン。
もっと早い時期なら展示があったかも・・・と涙。でもいい。
立派なお寺なのだ・・・と示す広々と描かれた境内を見ていくと、
絵巻の中の空気を感じます。これはこれで好き。


勝絵絵巻は苦手な絵巻なのでちらっと見るだけにして(でもなぜか
あっちこっちで見るのだ・・・。)

行基絵巻、久しぶりに見る「つきしま絵巻」。これ、幸若舞のストーリーなので、
不思議な話ようでいて、割合親しみやすい話の展開。
ストーリーを整理したりきちんとあらすじを語ろうとすると唐突なように
思えるけれど、こういうのはストーリーのその瞬間瞬間を味わうものなのだと
思う。特に舞のストーリーというのはそういうところがあるし、このぐらいジャンプ
するような話でないと「生き生きしない」のだ。
語りであったりそういったライブで楽しむものだと、あまり整理されていると
生きてこない。
絵巻展示は、人柱になる人々が捕まっているシーン。
これ、絵が割合デフォルメされてちょっと小さい人形を並べているような
感じに描かれているので悲惨なシーンなのに、なんだか明るい。画面上通して
明るい印象を受けるのは、彩色土人形がころころところがっているようにも
見える画面だからかもしれない。

うらしま絵巻は私が興味をずっと持っているテーマの一つ。うらしま物。
展示シーンは竜宮と竜宮から帰るところなのだけれど・・・「最後はうれしやうれしや」シーン
で展示が終わっていました。とても素朴に描かれているうらしま物語。
画面上の華やかなシーンは無く、かなりストーリーの人物に中心が置かれたような絵。
地味だな・・・。竜宮。

海彦山彦ものである「かみ代物語」絵巻。こちらも海の底の壮麗な竜宮が出てくる
のだけれど、おもてなしはどうやら囃子と舞の「けっこう和風だな・・・」という
おもてなし。番組は翁?ということで、こちらも何度か見たことがあって
また見ることができて嬉しい。

久しぶりに見る子籐太物語。出ているとは知らなかったのでとても嬉しい。
ねこの坊だ!とみたとたん思いました。これも高野山に行くんですよね。
発心といえば山。同じジャンルの「雀の発心」もありました。とってもきれいな
小さな絵巻。これは花鳥を楽しむためのストーリーのような気がします。
さまざまな鳥とお話しする雀。花鳥っていいですよねえ。私大好き。

反対にちょっと怖いなあと思うセットが
ねずみ草紙と藤袋草紙。どっちも美しい女性が動物に狙われる!という
ストーリーにも思える。どっちが怖いかといえば絶対に猿。さらわれちゃうから。
ねずみのほうは普通に婚礼の手続きしているので。でもどっちも逃げられちゃう。
穏やかに清水寺の縁で婚礼手続きを行ったねずみはちょっとかわいそうだなとも
思うし、暴力的な表現が物語中にないので。それに悲しいって最後は婚礼道具で
歌を作ったりしているし。かわいそう。
猿もだまされた(?)のでかわいそうなのだけれど、やっぱり同情できない!
大きな猿が迎えに来るって怖いじゃないですか。
とストーリーは読んだとき「やだなあ」とちょっと怖い気持ちになるものなので
すが、絵巻のほうは綺麗でかわいらしい小さいもの。小さい動物の絵が出てくるので
かわいらしいし、お猿も綺麗に描いていて綺麗な絵巻です。感じがいいのになあ。

熊の権現縁起絵巻、そして奈良絵本の長恨歌は華やかなもの。中国の宮廷なので
エキゾチックで豪華な絵。「屋しま」はご存知のお話のアナザストーリー的な
話。みんな大好き平家物語は派生する話を作ってみんなで楽しめるという
大きな有名な話があると、いつまでもいろんな楽しみ方ができるなあと思います。
華やかな色で見栄えのする絵。

伊勢参詣曼荼羅、そして不思議な聖徳太子絵伝屏風。細かい絵が並んで


仏伝図は面白そうな絵が並ぶ。割合にぎやかで色使いも明るい。

付喪神絵巻は人がいて見えなかったのでスキップ。
(前に見ているのと興味の中心ではないので)

此の後の展示は奈良絵が多くて、私の興味の中心から外れるので
ざっと眺めるのみ。
茶人、俳人、旦那(豪商。三井記念美術館なので三井高房の絵が
旦那の絵として出てました)そして、これ、前にも見たことがある
という、一度見たら覚えてしまう取らず啐啄斎の虎・・・。
絶対笑わせようとしているはず・・・。

此の後は軽くみました。一番嬉しかったのは明恵の夢記断簡。
僧侶絵もやはり興味の中心ではないのでさっと見ましたが、
なかなかいいものですね。素朴とはいえ、素朴さがおしゃれになる
文人、僧侶といったジャンルの絵。さっとあまりごりごりかかないのが
しゃれているのです。
またあっさりした美というもありますし。琳派の絵もちらっとあったり。
千鳥図なんかはざっと描いているようで、やはり上手いな!と思う構成力。


というわけで、思っていた以上に好きな作品がそろっていて、嬉しい驚きでした。
素朴をキーワードにあつまった絵画や像の数々でしたが、素朴っていうのは
難しいな。と思いました。


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